4-3 養育費(養育費に関する条項)

養育費(養育費に関する条項)

未成熟子の監護に必要な費用を養育費といいます。養育費は、慰謝料や財産分与とは性質が根本的にちがいます。父母が離婚して他人の関係になっても、子どもにとって父であり母であることには何の変わりもありません。未成熟の子が扶養を受ける権利、親が未成熟の子を扶養する義務は続くのです。

親権者・監護者になるかならないか、子どもを引き取るか手放すか、離婚後の面接交渉を認めるか認めないか・・・・・こうしたことに関係なく、養育費は親として当然に分担しなければなりません。

経済的余力と養育費負担義務

親が子どもに対して負う扶養の義務の内容は、「自分の生活水準を切り下げてでも自分と同等の生活をさせなければならない」というものであり、「自分に余力がある範囲で、子どもに最低限度の生活をさせればよい」というものではありません。

親より高い生活水準を保証する必要はありませんが、1個のパンでも共に分かち合って与えなければならないものであって、自分の余った範囲のパンを与えればよいという意味ではありません。(生活保持義務)

養育費の取り決めに際して次のことを明確にしておきましょう。

  • 権利者および義務者
  • 養育費として支払いがなされること
  • 支払われる額
  • 支払い期間

  養育費の額は親の生活程度によって異なるが、生活保持義務を考えれば、子どもは生活水準が高い方の親と同水準の生活を求めることができることになります。抽象的にいえば、親の学歴、生活水準が高ければ、養育費の額もそれと同じ水準を前提とした金額になります。

 

養育費の算定

家庭裁判所が提案した養育費算定表を相場として参考にされてください。

裁判所のホームページ(http://www.courts.go.jp/

 

養育費の支払方法

① 持参して支払う方法
② 現金書留等を利用して送金して支払う方法

  • 特定の預金口座に振り込んで支払う方法

養育費の支払いは、事情変更の認められるような特別の状況の変化がない限り、支払期に確実に履行されることが望まれます。最近では有効な方法として、③の特定の預金口座に振り込んで支払う方法です。支払いの有無、日時、金額が明らかにされ、債務の履行が客観的に証明されるのでこの支払方法が一般的に多く利用されています。なお、この支払いのために必要な費用は、原則として支払義務者の負担です。

(月払い)
1ヶ月を単位として、当月分を当月中に支払う方法が一般的です。

(賞与時金の加算)
賞与時期に加算して支払う旨を合意することがあります。この場合には、定期の月額に付加して支払うのか、賞与時期(たとえば7月および12月)については月額を変更するのかを明確にすることが肝要です。当事者に誤解がないようにしなければなりません。

(一時金の支払い)
養育費の支払期間中の総額を一括し、あるいは数回に分割して支払う旨を合意する場合があります。

離婚後はできるだけ早期にお互いの関わりを絶ち、それぞれの生活を精神的にも経済的にも安定させたいと願うこともあり、一括払いは有意義な場合もあります。しかし、問題点もあるようです。

(不動産の譲渡)
実務上、養育費相当額に代えて現在居住する住居の所有権を譲渡する合意がなされることがあります。判例では、養育費の支払いは金銭の給付に限られず、「財産上の給付」である不動産の譲渡も養育費の支払いにあたるとする考えもあります。

問題点 
①支払われた養育費が別の用途に消費された場合には、支払義務者はさらに養育費を支払う義務があるのでしょうか?
→ありません。

②一括払いを受けた金額に不満があり、養育費とは別途に扶養料の請求をされた場合は、別途扶養料を支払う義務があるのでしょうか?
→ありません。

 

支払期間

養育費は、未成熟子の監護費用であって、一定期間継続的に支払義務が生じるものであり、その始期および終期を明確にしなければなりません。

始期
養育費支払いの始期は、夫婦が別居したり、離婚するなど、一方の親が現実に未成年の子を養育しており、他方の親に対して子を扶養せよと要求できる状態が始まったときからで、離婚が成立した月からと定めることが一般的であるようです。

終期
養育費支払いの終期は、当事者に疑問や誤解のないように明確にしなければなりません。したがって、終期は年月日を記載して特定することがもっとも適当です。しかし、実務では「18歳まで」「成人に達するまで」などの表現をしています。

理論的には、子が成年に達したとき親権が終了するので、子の監護に関する処分として、養育費は子の成年に達するまでに限られるべきですが、将来子が大学に進学した場合の学資等の負担を求めて、成年に達した以後の分をも含む場合もあります。

始期および終期について十分に説明し、理解を得ることが肝要です。

・中学卒業まで
・18歳に達する月まで
・高校卒業まで
・成年に達する月まで
・大学卒業まで
・経済生活上独立できるまで   など

最近では成年(20歳)に達するまでとするものが最も多く、大学に進学することが特別な状況ではなくなっているので大学卒業までとする場合もあります。特に当事者の最終学歴が大学卒業という場合に、子にも同等の学歴を与えたいとの希望から、大学卒業を養育費の支払いの終期としている傾向があります。

事情変更の原則

契約一般いついて、契約時にまったく予見できなかったような社会事情の変動が当事者の責めに帰することのできない原因により生じ、しかもそれが重大であるというときは、当事者になお契約上の債務の履行を迫ることは著しく公平に反することから、信義誠実の原則(民法1条2項)を適用して、当事者に契約の解除または将来に向けて契約内容の改訂を請求することを認めています。

次のような場合に養育費の減額あるいは増額の申立てが認められています。

・物価の高騰
・就職
・貨幣価値の変動
・失職
・子の進学
・父母子の病気
・父母の再婚
・収入の大幅な増減
・再婚に伴う未成熟子の養子縁組 など

養育費の支払いと保証

養育費の支払期間は相当長期にわたることから、その間の債務者の資力に不安があるとして、保証人(連帯保証人)を参加させることも稀ですが可能です。たとえば、父親には養育費の支払能力がないとき、実質は祖父母が扶養料を負担することを了解したうえで、養育費の支払いを保証するといった場合です。

甲=山田太郎(夫)、乙=山田花子(妻)、丙=山田一郎(長男)、丁=山田美香(長女)

例1

甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として、平成○年○月から同人等が各々満20歳に達する日の属する月まで、1人につき1ヵ月金3万円を、毎月末日限り、丁名義の○○銀行△△支店 普通預金口座(番号012340)に振り込む方法により支払う。

※「満20歳に達する日の属する月」との表現がもっとも厳密な表現といえます。また、養育費の振込口座については、年少の未成熟子名義を指定する例が多くみられます。

 

例2

甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から同人が満18歳に達する月まで、次のとおり、毎月25日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

(1)  1ヵ月金2万5000円

(2)  毎年7月及び12月に、各々金4万円を加算する。

 

例3

甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から同人が満20歳に達する月まで、1ヵ月金8万円を支払うこととし、これを毎月5日及び20日の2回に分けて、各々金4万円を支払う。

 

例4

甲は、乙に対し、丙の養育費として、次のとおり、毎月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

(1) 平成20年3月から同22年3月まで、1ヵ月金2万円

(2) 平成22年4月から同25年3月まで、1ヵ月金3万円

(3) 平成25年4月から同人が満20歳に達する月まで、1ヵ月金5万円

 

例5

1 丙の親権者を父である甲と定め、監護者を参加人と定める。

2 甲及び乙は、連携して、参加人に対し、丙の養育費として、平成○年○月から同人が満18歳に達する月まで、1ヵ月金4万円を、毎月末日限り、参加人の指定する口座に振り込む方法により支払う。

※利害関係人として現実に子を監護養育する者を参加させ、両親が同人に対して養育費を支払うことを約した条項です。

 

例6

1 甲は、乙に対し、丙の平成20年3月から同人が満20歳に達する月までの養育費として金480万円を支払うこととし、これを分割して、平成20年4月から同25年3月まで、毎月10万円を毎月15日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

2 甲が前項の分割金の支払いを怠り、その額が金30万円に達したときは、当然に期限の利益を失い、甲は、乙に対し、その残金を一括して支払う。

 

例7

甲は、乙に対し、丙の平成20年3月から同人が満20歳に達する月までの養育費として金500万円を、平成20年7月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

 

例8

甲は、乙に対し、丙の平成○年○月から同人が満20歳に達する月までの養育費に充てるため、別紙物件目録記載の不動産を譲渡し、甲乙双方は、協力してその所有権移転登記手続をすることとする。

ただし、登記手続費用は、乙の負担とする。

 

例9

甲乙間の胎児(平成○年○月○日出生予定)が出生したときは、甲は、乙に対し、同人の養育費として、同人が出生した月から同人が満18歳に達する月まで、1ヵ月金2万円を、毎月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

※養育費は未成熟子の監護に必要な費用なので、未だ出生していない胎児の養育費の支払いということはありません。しかし、胎児は出生したときは親権者が母と定められ(民法819条3項本文)、非親権者である父に生活保持義務(同法752条)が生じることから、胎児の出生後の養育費について、出生前に父母間において協議して定めることは可能です。

 

例10

甲は、乙に対し、丙が高校に進学したときは、同人が高校に入学した月から同人が卒業する月までの間、毎月金3万円を、前項のよう養育費に付加して支払う。

 

例11

甲は、乙に対し、丙が大学に進学したときは、大学の入学に要する費用のうち、入学金及び初年度の授業料の2分の1に相当する額を、大学入学した月の末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

 

例12

1 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から同人が満20歳に達する月まで、毎月末日限り、乙の指定する丙名義の口座に振り込む方法により支払う。

2 参加人は、乙に対し、甲の前項の養育費の支払いについて連帯保証し、参加人は、甲と連携して、乙に対し、前項と同様の期日及び方法にしたがって、前項の金員を支払う。ただし、その連帯保証の期間は、参加人が生存する期間とする。

※利害関係人として第三者(当事者の親族であることは要しない)を参加させたうえで、相手方の負担する養育費支払義務について連帯保証をした例です。

 

例13

乙は、甲に対し、甲乙間に事情の変更がない限り、丙の養育費を請求しない。

 

例14

乙が再婚したときは、乙は、甲に対し、前項の丙の養育費について、乙が再婚した月以降の支払いを免除する。

 

例15

甲は、乙に対し、丙及び丁の年間授業料並びに今後の入学に係る入学金を、前項記載の口座に振り込んで支払う。

 

例16

3 甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として、次のとおり毎月27日限り、乙名義の○○銀行△△支店 普通預金口座(番号1234567)に振り込む方法により支払う。

ただし、丙及び丁の養育費が別途特別に必要と認められるときは、甲は、乙に対し、甲乙間で協議し合意された金額を支払う。

(1) 平成20年10月から同25年9月まで、1人につき1ヵ月金4万5000円

(2) 平成25年10月から同人が各々満20歳に達する月まで、1人につき1ヵ月金6万円

4 前項の定めにかかわらず、甲は、乙に対し、養育費の追加分として、第5項に定める建物明渡の日の属する月の翌月から丙及び丁が各々満20歳に達する月まで、1人につき1ヵ月金2万5000円を、毎月27日限り、前項記載の口座に振り込んで支払う。

ただし、本項の定める養育費の追加分の支払いは、乙が、丙及び丁と3名のみで同居することを条件とする。

※相手方所有の不動産に一定期間居住することを認めるとともに、その後の住居費について、子の養育費名目で援助することを内容とした事例です。

 

例17

甲乙双方は、前項の離婚届の受理を条件として、乙が管理するマンションの売却代金1100万円を、次のとおり配分し、各々取得する。

(1)甲乙双方は、婚姻中に取得した財産の清算分として、各々金275万円を取得することとし、乙は、甲に対し、平成19年12月17日限り、金275万円を、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。

(2)乙は、丙及び丁の平成19年12月から各々満20歳に達する月までの養育費として、1人につき金275万円を取得する。

※協議離婚に伴い、居住していたマンションを売却し、その売却代金を財産分与および子の養育費として一括して支払いをした事例です。

 

例18

(1) 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成20年1月から同人が満20歳に達する月まで、1ヵ月金4万円を、当月分を翌月5日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

(2) 甲乙双方は、丙の病気、進学等の特別の費用の負担については、別途協議することとする。

 

例19

(1) 甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として平成19年8月から同人らが大学又はこれに準ずる高等教育機関を卒業する月(ただし、大学等に進学しない場合は、同人らが各々満20歳に達する月)まで、1人につき1ヵ月金12万5000円を、毎月末日限り、乙の代理人名義の○○銀行本店普通預金口座(番号0987654)に振り込む方法により支払う。

(2) 甲乙双方は、丙及び丁の高校の学費、(1)記載の大学等の入学金、学費の負担については、別途協議することとする。

(3) 甲乙双方は、丙及び丁の平成19年7月分の養育費として、平成19年8月11日、甲が乙に対して金15万円を支払い、乙はこれを受領したことを、相互に確認する。

※養育費の支払いは相当長期間に及ぶことが一般的であり、その振込先を代理人名義の口座とすることの相当性は、再考の余地があります。

 

例20

3 甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として、次のとおり、毎月末日限り、乙名義の○○信用金庫△△支店総合口座(番号00112233)に振り込む方法で支払う。

(1)   平成20年3月から同21年3月まで、1人につき1ヵ月金3万円

(2) 平成21年4月から同人らが各々満20歳に達する月まで、1人につき1ヵ月金1万5000円

4 甲乙双方は、前項の定めにかかわらず、乙の収入の状況の変更、丙及び丁の進学、病気などの事情があったときは、養育費の額について別途協議することとする。

 

例21

(1) 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成20年1月から同人が満20歳に達する月まで、1ヵ月金3万円を、毎月末日限り、丙名義の郵便局郵便貯金 通常貯金口座(記号01000、番号1234567)に振り込む方法により支払う。

(2)   甲乙双方は、丙が小学校に入学するとき、改めて、養育費の額を協議することとする。

 

例22

甲は、乙に対し、丙及び丁の扶養費として、平成20年5月から同30年4月まで1人につき1ヵ月金1万円を、前項記載の乙名義の口座に振り込む方法により支払う。

なお、甲乙双方は、平成30年4月以降の丙及び丁の扶養費について、同人らのその当時の病状等を勘案し、改めて協議することとする。

 

例23

甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として、次のとおり、毎月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法で支払う。

(1)   丙につき、平成20年6月から同人が満22歳に達する月まで1ヵ月金5万円

(2)   丁につき、平成20年6月から同人が満20歳に達する月まで1ヵ月金5万円

※養育費の支払終期を長男と長女とで異にした例です。

 

例24

(1)甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成20年6月から同人が満20歳に達する月まで、1ヵ月金5万円を、毎月25日限り、丙名義の○○銀行△△支店 普通預金口座(番号0098700)に振り込む方法により支払う。

(2)甲乙双方は、丙の病気、進学等の特別の費用の負担については、丙の意向を尊重し、協議することとする。

4 甲が、前項の養育費につき、それぞれの支払期限にその支払いを怠ったときは、甲は、乙に対し、当該遅滞額に加え、これに対する支払期限の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

※本条項は、毎月の支払分について、遅滞額に遅延損害金を支払うとする条項であるが、極めて異例の事例です。

当事者間に離婚等のすべてに合意があるものの、親権者が相手方に対して極度の不信感を抱いているため、このような過怠約款を付したものがあります。このような過怠約款の相当性については疑問なしとはしないが、当事者の合意を尊重し、このような条項を作成しなければならない場合もあるという例です。