2 許可の要件(基準)について

建設業の許可を受けるためには、法第7条(特定建設業は第15条)に規定する許可の基準に適合していること及び法第8条に規定する「欠格要件」に該当しないことが必要です。

(1)建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものであること
   Ⅰ 経営業務の管理責任者等の配置
   Ⅱ 適切な社会保険等に加入していること
(2)専任の技術者を有していること
(3)請負契約に関して誠実性を有すること
(4)請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
(5)欠格要件等に該当しないこと

(1)建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものであること

Ⅰ 経営業務の管理責任者等の配置 (建設業法施行規則第 7 条第 1 号)

次のイ又はロのいずれかに該当すること。

イ:常勤役員等が経営業務の管理責任者等である場合

常勤役員等(法人である場合には業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者、また個人である場合には本人又は支配人)のうちの1人が、次の(1)~(3)のいずれかに該当すること。

(1)規則第 7 条第 1 号 イ(1)該当建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)規則第 7 条第 1 号 イ(2)該当建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(執行役員等)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)規則第 7 条第 1 号 イ(3)該当建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

ロ:常勤役員等とこれを直接補佐する者を置くことで経営管理の体制をとる場合

常勤役員等(法人である場合には業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者、また個人である場合には本人又は支配人)のうちの1人が、次のⅠ又はⅡのいずれかに該当する者であって、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者として、次の(a)、(b)及び(c)に該当する者をそれぞれ置くものであること。

「財務管理」、「労務管理」及び「業務運営」については、次のとおりです。

木下賢一

「ロ」については個別認定(県の事前確認)が必要になります。十分な期間をもって事前にご相談ください。


「常勤役員等」とは
法人である場合:役員のうち常勤であるもの。
個人である場合:その者又はその支配人。
「役員」とは
①業務を執行する社員…持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の業務を執行する社員
②取締役…株式会社、有限会社の取締役
③執行役…委員会設置会社の執行役
④これらに準ずるもの…法人格のある各種の組合等の理事
⑤これらに準ずるもの(執行役員等)…業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等(建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門(一部の営業分野のみを分掌する場合や資金・資材調達のみを分掌する場合等)の業務執行に係る権限移譲を受けた執行役員等を除く。)
*執行役員(⑤に該当する者を除く)、監査役、会計参与、監事及び事務局長は含まれない。


「役員等」とは、「(3)誠実性」を参照


「常勤であるもの」とは
原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに、毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)している者をいいます。
その営業所に常勤して専ら職務に従事することを要するもので、以下に掲げる者は除く。
① 住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
② 他の営業所(他の建設業者)の専任技術者となっている者
③ 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引主任者等他の法令により特定の事務所において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所と他の法令より専任を要する事務所が同一企業、同一場所である場合を除く)
④ 他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任であると認められる者


「建設業に関し」とは
全ての建設業の種類をいい、建設業の業種ごとの区別はなく、全て建設業に関するものとします。


「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは
業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。


「支配人」とは
営業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人をいい、これに該当するか否かは、商業登記の有無を基準として判断します。


「執行役員等としての経験」とは
取締役会設置会社において、取締役会の決議により、特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験をいいます。


「経営業務を補佐した経験」とは
経営業務の管理責任者に準ずる地位(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位にある者)にあって、建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経験をいいます。


「役員等に次ぐ職制上の地位」とは
当該地位での経験を積んだ会社内の組織体制において役員等に次ぐ役職上の地位にある者をいい、必ずしも代表権を有することは要しません。「組織図」等で確認します。


「直接に補佐する」とは
組織体系上及び実態上常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を常勤で行うことをいう。


「許可申請等を行う建設業者等」とは
許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者を指します。


【専任技術者との兼任】
Ⅰのイ、ロのいずれかに該当する経営業務の管理責任者が専任の技術者としての基準を満たしている場合には、同一の営業所(原則として主たる営業所)内に限って当該技術者を兼ねることができます。


【出向社員について】
出向契約に基づく出向先においての常勤性が確認できれば、経営業務の管理責任者になることができます。


【建設業法施行規則第7条第1号イ⑴から⑶に掲げる経験の通算について】
ロ:常勤役員等とこれを直接補佐する者を置くことで経営管理の体制をとる場合の表に掲げる経験のうち、⑴と⑵を通算して5年以上ある場合は、⑵該当とします。また、⑴、⑵、⑶を通算して6年以上ある場合は、⑶該当とします。

Ⅱ 適切な社会保険等に加入していること

(規則第 7 条第 2 号) ※令和2年 10 月1日要件化

下記のいずれにも該当する者であることが必要です。
イ) 健康保険法(大正 11 年法律第 70 号)第3条第3項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正 15 年内務省令第 36 号)第 19 条第1項の規定による届書を提出した者であること。
ロ) 厚生年金保険法(昭和 29 年法律第 115 号)第6条第1項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和 29 年厚生省令第 37 号)第 13 条第1項の規定による届書を提出した者であること。
ハ) 雇用保険法(昭和 49 年法律第 116 号)第5条第1項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和 50 年労働省令第3号)第 141 条第1項の規定による届書を提出した者であること。
*「営業所」とは、建設業法第3条に規定する営業所(本店又は支店若しくは常時請負契約を締結する事務所)をいいます。

(2)専任技術者の配置

営業所ごとに次のいずれかに該当する専任の技術者がいること

「専任のもの」とは、
その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専ら職務に従事することを要するもので、以下に掲げる者は除く。
① 住所又はテレワークを行う場所の所在地が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
② 他の営業所(他の建設業者)の専任技術者となっている者
③ 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引主任者等他の法令により特定の事務所において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所と他の法令より専任を要する事務所が同一企業、同一場所である場合を除く)
④ 他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任であると認められる者


「実務の経験」とは
建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれませんが、建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものとします。
また、実務の経験の期間は、具体的に建設工事に携わった実務の経験で、当該建設工事に係る経験期間を積み上げ合計して得た期間とします。なお、同一人物で経験期間が重複しているものにあっては二重に計算しませんが、平成 28 年 5 月 31 日までにとび・土工工事業許可で請け負った解体工事についての実務の経験の期間については、とび・土工工事業と解体工事業両方の実務の経験として二重に計算できるものとします。


「一定の指導監督的な実務の経験」とは
許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額(税込み)が 4,500 万円(昭和 59 年 10 月 1 日前の経験にあっては 1,500 万円、昭和 59 年 10 月 1 日以降平成 6 年 12 月 28 日前の経験にあっては 3,000 万円)以上であるものに関する指導監督的な実務の経験をいいます。
なお、発注者の側における経験又は下請負人としての経験は含みません。
「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。


「指定学科」とは
許可を受けようとする建設業の種類に応じ、【指定学科一覧表】に掲げるものです。


「指定建設業」とは
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業及び造園工事業の7業種をいいます。


【経営業務の管理責任者との兼任】
上表中のイ~ハまでのいずれかに該当する者が経営業務の管理責任者としての基準を満たしている場合には、同一の営業所(原則として主たる営業所)内に限って当該経営業務の管理責任者を兼ねることができます。


【出向社員について】
出向契約に基づく出向先においての常勤性が確認できれば、専任技術者になることができます。

「営業所の専任技術者」は、原則として現場の主任技術者又は監理技術者になることができないことに注意!!

「営業所の専任技術者」は、請負契約の締結にあたり技術的なサポート(工法の検討、注文者への技術的な説明、見積等)を行うことが職務ですから、所属営業所に常勤していることが原則です。
 例外的に、①当該営業所で契約締結した建設工事で、②工事現場の職務に従事しながら、実質的に当該営業所の職務を適正に遂行できる程度に近接した工事現場で、③当該営業所と常時連絡をとり得る体制にあり、④当該建設工事が、主任技術者等の工事現場への専任を要する工事《公共性のある工作物に関する重要な工事で請負金額3,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上》でない場合には兼務することができます。

(3)誠実性

請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれがないこと

法人である場合においては、当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においては、その者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。


その例として、上記の者が暴力団の構成員である場合や建築士法・宅地建物取引業法等で「不正」又は「不誠実な行為」を行ったことにより免許等の取消処分を受け、その最終処分の日から5年を経過しない者である場合は、許可を受けることはできません。

「役員等」とは
業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者をいいます。
同等以上の支配力を有するものと認められる者である可能性がある者として、少なくとも「総株主の議決権の 100 分の 5 以上を有する株主」及び「出資の総額の 100 分の 5 以上に相当する出資をしている者」(個人であるものに限る。)を含みます。


「政令で定める使用人」とは
支配人及び支店又は営業所の代表者(支配人除く)をいう。(令3条使用人)」


「不正な行為」とは
請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為をいう。


「不誠実な行為」とは
工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいう。

(4)財産的基礎等

請負契約を履行する財産的基礎を有すること

(注1)
1.この表の判断基準は、既存の企業にあっては許可申請時の直前の決算期における財務諸表、新規設立の企業にあっては創業時の財務諸表によること。なお、一般建設業に係る申請時に直前の財務諸表を提出できない場合は、ロ又はハの要件を備えていることが必要です。


2.「自己資本」とは、法人にあっては貸借対照表における純資産合計の額を、個人にあっては期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。


3.「500 万円以上の資金の調達能力」とは、担保とすべき不動産等を有していること等により、500 万円以上の資金について取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等を得られることをいいます。


4.「欠損の額」とは、法人にあっては貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及びその他の利益剰余金の合計額を上回る額を、個人にあっては事業主損失が事業主借勘定の額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額をいいます。


※欠損比率について
法人の申請で次の場合は欠損の額が発生しないので、次の計算式を使う必要はありません。
○ 繰越利益剰余金が正の場合
○ 繰越利益剰余金が負である場合、その絶対値の金額を、資本剰余金、利益準備金、そ
の他の利益剰余金(繰越利益剰余金を除く。)の合計額が上回るとき

5.「流動比率」とは、流動資産を流動負債で除して得た数値に 100 を乗じた数をいいます。

6.「資本金」とは、法人にあっては株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額を、個人にあっては期首資本金をいいます。


(注2)
1.資本金の増資による特例(特定建設業)
資本金の額について、申請時直前の決算期における財務諸表では、資本金の額に関する基準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、資本金の額に関する基準を満たしているものとして取り扱います。この取扱いは資本金に限ったもので、自己資本は財務諸表で基準を満たすことが必要です。
2.特定建設業の財産的基礎の要件は、許可の申請時に審査されるものであり、許可の有効期間中に基準に適合しない状態が生じても、許可を取り消されることはありません。

(5)欠格要件等 -法第8条-

下記のいずれかに該当する場合には、許可を受けられません。

1 許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり又は重要な事実の記載が欠けている場合
2 法人にあってはその法人、役員等、支店又は営業所の代表者が、個人にあってはその本人、支配人等が次のいずれかに該当しているとき
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等によりその許可を取り消されて5年を経過しない者
③許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者
④許可の取消処分を免れるための廃業の届出を行った事業者について、許可の取消処分に係る聴聞の通知の前60日以内に当該法人の役員等若しくは政令で定める使用人又は個人の使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
⑤営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
⑥営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
⑦禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑧建設業法、又は一定の法令の規定(※)に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
⑩心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
⑪営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記のいずれか又は法定代理人が法人でその役員等のうちに上記①②③④⑥⑦⑧⑨までのいずれかに該当する者
⑫暴力団員がその事業活動を支配する者


※「一定の法令の規定」とは次に掲げるもの
•建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法の規定で政令で定めるもの
•暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
•刑法第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条又は247条
•暴力行為等処罰に関する法律